Poo-tee-weet?(プーティーウィッ?)

ビジネス書などに関する紹介・感想をメインに記事を書いています。経営、組織論、テクノロジー、マーケティング。

アクティブブックダイアログ(ABD)に参加してみた

このエントリーを読むには約7分45秒かかります。

もくじ

はじめに

先日のブログエントリーでもワークショップについて考えていることが伺え知れると思うが(エントリー)、読書会の一つの形にアクティブブックダイアログ(略称:ABD)というものがある(参考サイト)。アクティブブックダイアログを見つけた経緯としては、積読がどんどん増えていく状況でなんとかモチベーションを維持しながら本を読めないかなと個人的に思っていたということがある。またこのようなワークショップ自体に興味がある。そんなこんなで、おそらく年末くらいに実際にはアクティブブックダイアログのことを認知して、色々検索して以下のツイートをしていたのが年初1月のこと。

ABDの本家サイトにもABD読書会のスケジュールが掲載されているのだが、ABD自体が京都の方で生まれた?とかで、関西方面での実施が多く東京ではほとんどやっていない様子。東京でも分厚くて有名な『ティール組織』を教材にした会が何度かあったようだが最近は開かれておらず、東京でもABDの読書会ないかなぁと思っていたところ、たまたまツイートでシェアされいた<「管理ゼロで成果はあがる」をアクティブブックダイアログで読もう>という会があったので、教材自体も読んでみようと思っていた本だったので、知ってから即参加を申し込み参加してきた。

前置きが長くなりましたが、このエントリーではアクティブブックダイアログに関して僕が理解したことと参加した感想をまとめておきたいと思う。

アクティブブックダイアログの進め方

進め方の詳細はABDの本家サイトにも掲載されていて、これを参考にすればある程度ワークショップをやった経験があれば運営できそうだが、初めての人はやはりやったことのある人とやったほうがよさそうだ。

今回の勉強会では基本に忠実に以下のように進められました。(時間はざっくり記憶している内容なのでちょっとズレがあると思います)今回は7名で実施しました。

いかにアジェンダとだいたいの時間配分、そして簡単にどんなことをするかを書いておきます。

  • オープニング 30分くらい
    • チェックイン 10分:自己紹介、この会に期待することなどのいわゆるワークショップを開始する際にチーム意識を持たせるやつ
    • オリエンテーション 15分:ABDの基本的な概念の説明とその会の進め方の全体像の説明
  • メイン 90分くらい
    • メイン1
      • 第1章を分担してサマリー(1人10ページをB5用紙2枚)15分
      • リレープレゼン 15分:まとめた内容を1人2分で発表
    • メイン2
      • 残りを分担してサマリー (1人20ページをB5用紙6枚)30分
      • リレープレゼン(1人5分)35分
  • ダイアログ 30分くらい:みんなで読んだ内容を振り返りながら気づきや疑問点などを自由に会話する(意見をぶつけ合うというディスカッションではなく、ダイアログ)
  • エンディング
    • チェックアウト 20分くらい:今日の感想などをみんなでシェアする

効果

アウトプットが前提かつ制限された時間で、集中力があがる

チームに迷惑をかけたくないというプレッシャーも少なからずあるが、リレープレゼンの際にちゃんと説明できるように要点を絞ってB5用紙にまとめようとするので、自然にポイントを掴むように読んでいました。

また、時間制限の中でまとめるというのも集中力をあげる上で良い効果があると感じました。30分で20ページを読むという形で個人個人時間配分を工夫しながら、しかも30分なのでダラダラせずにしっかり読もうという感じになります。

一人で読んでいるとやはり1時間読書しよう!といってもなかなか集中できなかったりしますが、アウトプットが前提なのでちゃんと読まないといけない気になりますし、時間が比較的短めなので、これくらいなら頑張ってみよう!と読書が苦手な人にも効果が高いと感じました。

一方で、まとめかたについては、急にやろうとすると戸惑う人もいました。読みながら書き出すべきか、全部読んでから書き出すべきか。時間制限もあるので、みんな工夫しながらやっていました。でも全部読むことが目標でもないみたいなので、気楽にやるのがいいのかなと思いました。

自分の内容とほかのメンバの内容がどう繋がるか注視する

僕は最後から2番目くらいの章でしたが、最後の人の章は本全体をまとめるような内容だったので、「こうやってこの本をしめたんだな」という納得感とともに、アハ体験のようななんか気持ち良さを感じました。

今回はページ数をある程度均等に分割されていたのですが、章の途中から急になんの話か分からずということがあります。まとめている最中は「何の章立てなんだろうなぁ」と思っていても、リレープレゼンで前後の方のサマリーを聞いて、「ここはこういう章立てだったのか」というのが分かってきます。これも気持ち良さを生み出している気がします。

ダイアログで多角的な意見を聞くことができる

最後にダイアログという時間をとって、個々人が疑問に思ったこと、感想でもなんでも語ってみるという場を比較的長めに時間をとって運営されていたのかなと思いました。このダイアログの時間で、この本をほかの人はどう読むのだろうという気づきを得ることもできますし、ほかの方が持っている知識や経験談などを吸収することができると感じました。

日本人って議論とか苦手なタイプが多い(それは、声が大きい人が議論に勝つとか、そもそも勝つとか負けるみたいな風にみているからだと思いますが)と認識されていますが、このダイアログの場は正解も不正解もない、単純に思ったことを発言してみればいいという場でした。そのためにファシリテーターの方も安心感を出すように促してくれたのでそれも良かったです。

最後に

今回の書籍自体が非常に読みやすい本だったのですが、難しい本になった場合にはちょっとやり方を工夫してみたりしないといけないかなと感じました。ただ、アクティブブックダイアログはすごく面白いなと思いましたので、社内などでもやってみようかなと思いました。

ちょうどABDの本家サイトをみていたら直近東京では『ファクトフルネス』を教材に実施される予定があるようなので、気になる方は参加してみてはどうでしょうか(僕は参加できない)。

君はもう読んだか?B2Bビジネスの新常識 The Model

#タイトル煽ってみたw
 
 
"The Model"という言葉を知ったのは実は去年の夏くらいなのだけれど、まあ大体理解している内容かなと思いつつ、先週末パラパラと斜め読みした時から興味深い内容ばかり。この本の内容はSaaSビジネスに限らず全てのB2B企業が今理解しておくべき内容だと思いました。実際自分自身に照らし合わせてみると、僕自身が過去2年くらいやってきたビジネスディベロップメントの役割として、マーケティングから営業、顧客経験まで製品を取り囲むプロセス全体を理解して、ボトルネックを解消するということがようやくわかってきたところだったので、共感とともにまだまだやることがあるなとたくさんの気づきを頂きました。

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付箋たくさん。
 
そもそもマーケティング活動をマーケティングファンネルといったフレームを使って理解したり、営業活動を営業ステージごとにどのようにアプローチするか?どのようなことをチェックするか?ということはどちらの組織にいてもそれぞれを個別に理解することはあっても、全体を俯瞰的に見て連携をするという発想が個人的には少なかったという気づきを得た。つまり、分業が進みすぎ、個別最適化されたお互いの評価指標を忖度してしまっていて、そもそもその評価基準は正しかったのか?評価にするのはいいとして、本質的にそれは意味のある結果だったのか?そんなことを深く考えもせずに活動していたところをいい意味で気づかせてくれる。顧客への認知から、販売、顧客の成功体験という会社全体としてのプロセスを意識して働くのと、意識しないで働くとの差はかなり大きい。
 
 
特定の製品のビジネスディベロップメントという観点では、売上を最大化するというミッションのため、どうしても営業サイドへの介入が増えてしまうのだけれど、営業だけではなくそれ以外の部分にボトルネックがある可能性もある。本書でも述べられているが、そのボトルネックを見つけるために、数値的にはもちろん、その数字の裏に隠されている本質を見極めるちからはマネジメントとして非常に重要なスキルだなと思った
 
 
第4部では、戦略・リソースマネジメント・パフォーマンスマネジメント・リーダーシップなど、組織を横断的にみている人にとって必要な考え方などが述べられているのだが、ちょっと駆け足気味になっていた気がして「もっと聞いてみたい」という感想を持ちながら読んでいた。第11章の戦略では、オセロゲームで勝つための最善手という意味で「天王山をとる」という表現があるらしい。それをモチーフに著者自身が戦略面で以下のようなことを意識しているようだ。これも参考になる。
 
・ビジネススクールなどで教えられている経営理論を軽視せずに勉強する。理論だけで成功するわけではないが、セオリーを知っていて経営判断をする人と、知らないで判断をする人では成功の確率がまるで違う
・スタートの勢いは重要だが、中長期的に勝負を考える。大企業は過去のしがらみなどによって打てる選択肢がどんどん絞られていくのに対して、小さい者の強みは打てる選択肢が多いことにある
・自社にとって天王山となる市場や顧客を見逃さず、勝負所であらゆるリソースを投入して獲得する
-p208
 
 
本書の著者である福田さんは一度も会ったことがなく、夜の勉強会で福田さん自身の講演を聞いてから買った。にもかかわらず、本書からにじみでるパッションと組織横断的かつ現場にまで降りてクレバーにボトルネックをみつけ、対処していっている人なのだろうなと感じたし、決めたことはしっかり実行する、現場への説明も怠らないという徹底さはすごいなと思った。
 
また、本書でも述べられているが、オラクル→セールスフォース→マルケトという経歴のなかで様々なメンターと呼べるような人からの支援がありキャリアを形成しており、そういった支援を受けられるくらい抜きん出た才能を持った人なんだなと感じた。自分自身もメンターのような存在は何名かいる気がするが、メンターから何かを教えてもらえる、メンターが誰かほかの人に「アイツは優秀だから」と紹介されるように、自分自身のスキルや面白みを作っていかなければならないなということも気付かされた
 
僕自身試行錯誤で2年間でようやく視界がひらけてきたのだけれど、この本を読んで更に視界がクリアになりました。この本はきっと今後どこかで行き詰まったときに、そのプロセスはどこか?をベースに読み返し、ボトルネック解消のヒントを得るために何度も読み返すことになりそうだ。
 
営業プロセスに、『The Goal』で述べられている製造プロセスのボトルネック解消の考え方を適用しようと試みたこのThe Modelですが、改めて『The Goal』の方も読み直したいなと思いました。
 
蛇足:ちなみに、1年前くらいから「ビジネスディベロップメントの教科書」という本でもちょっとづつ書いていこうかなと思っていましたが、この本にまさるものは書けなそうです。僕が考えるビジネスディベロップメントは、この本の全体を理解して実行する人だと思います。

【読書感想】 資産運用2.0というキーワードにつられて読んだ 『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』

https://www.instagram.com/p/BsjbO9fgUk9/

北アルプスの朝焼け。少し曇り気味だったけど稜線が綺麗でした。#北アルプス #山 #稜線 #mountain #northalpsjapan #松本 #アウトドア #朝 #morning #outdoor #mastumoto #常念岳 #朝焼け #sunrise #城山公園

 

新年になってお金のプランを立てる人も多いと思います。僕はまだ今年の目標がきっちり決まっていません(ぼやっとはできてきているのですが。1ヶ月プランニングに使うなんてクソだと思っていますが、結局まあまあ時間かかるので、13ヶ月契約くらいで考えたほうがいいのかなとか思い始めました。まあ、今年はちょっと長期プランに変更をかけているので時間がかかっているのですが。


さてさて、年末年始にソーシャルでいろんな人が紹介していた(と思う)Wealthnaviの柴山 和久さんが書いた『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』を読みました。かなりライトウェイトでわかりやすいのでおすすめです。

 

 

 

個人投資家みたいにアクティブに投資せずに、資産を長期目線で作っていこうという投資において、「長期・積立・分散」という3つのキーがあるのは知っていたが改めて再認識することもいくつか。


例えば、株は下がっているときに買いで、上がっているときには売り。実際株価が下がっているときってこのままずっと下がっていくのかなぁと思って損切りするために売っておくかみたいなことを思ってしまうのだけれど、それはアクティブな投資家がするような行動であって、パッシブな投資家はそういうことをしないように冷静になる必要がある。


また、半年に一度くらいの頻度でポートフォリオのリバランスをすることについてもあまり今まで意識していなかったので、今年から取り入れていきたいと思いました。

 

最後3分の1くらいはWealthnaviの創業背景みたいのも語られていました。財務官時代〜MBA〜マッキンゼー〜起業の流れは読んでいて非常に面白かったです。かなりスピード感もち、かつ着実に新年もって動かれている方だなあと。

 

投資についてはかなり素人なので、ちょっとずつ学んでいきたいと思います。

ワークショップをデザインしよう

(スペイン、コルドバの夕陽)

はじめに

会社でワークショップスタイルで会議を進めることが最近流行ってる。というか、単純にその会議を双方向にするという思いや、答えのない問題に対してどういう活動をすべきか議論から生み出そうという思いがあって自然と選択肢がワークショップになっている。

ちょうど一件社内でワークショップ形式の継続的なミーティングを設計しようと考えはじめたタイミングで、10年くらい前に読んだ本『ワークショップ・デザイン』を読み直した。

ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり(ファシリテーション・スキルズ)

ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり(ファシリテーション・スキルズ)

ワークショップのデザイン方法

ワークショップを第三者の会社に実施してもらう時、すごく効果が高く実施されたりする。これはおそらく、型を理解しているとともにしっかり設計されているからなのだろう。

このように作り込み、つまりワークショップの設計において以下のようなことがポイントとなる。

  • コンセプトの設定
    • 対象や目的/意図の明確化
    • 参加者の明確化
    • それにあった場所、興味を引くようなネーミング
  • 設計はいくつか型がある
    • 基本的には三部構成:オープニング→本体→クロージング
    • 本体の構成例:起承転結型、体験学習型、発散収束型、問題解決型など
  • プログラムのデザインについては以下を設計
    • セッション × (アクティビティ+テーマ+場)
    • アクティビティには、場を温める、資源を引き出す、話し合う、作り上げる、分かち合う、というようなカテゴリがある
    • テーマは考えやすいことからはじめるのが良い、知っていることとか、みんなが共通で理解していることとか
    • は人数の設定などに応じて決める、席の配置とか

感想

この本では、だいたい半日から数日かけるようなワークショップまで、そのワークショップ全体で目標とすることから、それぞれのセッションでどのようなアウトプットを期待して、どのように引き出すか、というのが具体的な例やファシリテーションするためのきっかけとなるようなツールなどが紹介されている。

上記のような、しっかり目的を考えて、それに合わせた実施形態を選ぶというのは何を考えるにも重要だと思うが、そういった基礎といろんな人が使って有効であったツールを引き出しに持っていると、効果的に会議やこのような双方向型のワークショップを実施しやすくなる。

実際にこの本で紹介されているような技を使ってみて、またファシリテーション技術も高めたいと思います。

ネットワーク効果を理解する(その2)ー第4章〜第6章まで箇条書き要約『急に売れ始めるにはワケがある』

以前に3章まであげていましたが、4章から6章まで箇条書きまとめしていましたので、備忘も含めて残しておきます。感染するのって、強いつながりも必要だけど、過剰すぎるとだめで、弱いつながりも意識するのが重要というのが今の所僕が得たことですかね。
 
引用もありますが箇条書きは僕のメモ書きなので、是非ご自身で読んでもらうことをおすすめします。特にマーケティングに携わっている人などにおすすめ。ちょっと小難しいかもしれませんが。
 
 
 

第4章:背景の力 人の性格に感染する背景・・・原則3

  • NY:1990年を頂点として、犯罪率が急激に減少。殺人事件は三分の二減少、重罪事件は半分。
  • 背景の力:それが起こるときと場所の条件と状態に敏感に反応する感染
  • NYの犯罪伝染病の流れを変える役割を果たした「何か」
    • 「割れた窓」理論:犯罪は無秩序の不可避的な結果。割れたまま修理されていない窓のことを誰も二期似ていないしだれも責任をとっていない。まもなく他の窓も割れ、無法状態な雰囲気が伝播する
    • 1980年代半ばに「割れた窓」理論を実地に映すべきだと主張し、数十億ドルの予算をかけて地下鉄再建計画を実施
      • 1984年〜1990年まで電車への落書きを撲滅する活動を実施
    • 無賃乗車の撲滅=無秩序を象徴する小さなしるし
      • 無賃乗車しようとしている者を片っ端から捕まえては手錠をかけ、「満員」になるまでプラットフォームに数珠つなぎに立たせたておいた
      • →無賃乗車の取締に本気になっているという意思表示を広く知らせるための方策
    • 生活環境犯罪の取締が、凶悪犯罪激減のティッピング・ポイントだったーp200
  • 背景の核心
    ”わたしたちが内面とみなしているものー自分の好みや感情ーは、一見するとそれとは直結しない個人的な影響によって、一日数分しか見ていないニュースキャスターによって、あるいは二分間の実験でただ黙って隣りに座っている人によって左右されていることがわかった。背景の力の核心は、それと同じことがある種の環境にも当てはまるということにある。つまり、私達の内面状態は、必ずしも意識していないかたちで、外部の環境に決定されているということだ。”ーp207
  • 2つの心理学の実験
    • 検証1:模擬監獄の実験
      • 実験の目的:監獄はどうして不快なのか?不快な人間が多数いるから?監獄の環境が不快だから?
      • 実験の内容:実験に応募した人半分を模擬監獄の看守に、半分を囚人にする実験
      • 実験の結果:看守たちがたちまち厳しいしごき屋に変貌した
        • 1日目:午後二時に囚人たちを起こして腕立て伏せを命じて壁に向かって整列させ、気まぐれな命令をだした
        • 2日目:囚人たちは反抗して識別番号をはがし房内に立てこもり
          • 看守たちは囚人を裸にし、消火器を噴射しそれに対抗。反乱の首謀者を隔離房に閉じ込めた
        • 実験は2週間の予定だったが6日間で切り上げ ← 36時間後に1人の囚人がヒステリー状態、4人の囚人が極度の情緒不安定で解放されたことを理由に
    • キーワード:状況(シチュエーション)
      • 環境問題(育てられた環境、通った学校、友達の種類、どこに住んでいるか)や遺伝子のような、”決定要因のすべてが一掃されてしまうような時と場所と条件が存在する(p211)”
      • =正常な人間を良い学校と恵まれた家庭と良い住環境から引き離し、目前にある状況の細部を変えただけで彼らの行動を協力に支配してしまうような瞬間がある(p211)
    • 検証2:正直な人はいつも正直か?
      • 実験の内容:8才から16才までの1万1000人の生徒を対象に正直さを測るために考えられた数十ものテストを実施
        • テストは、空欄を埋めるような形式
          • 1回目は通常の所定時間のほんの一部しか与えられず未回答のまま回収され、採点される
          • 2回目は問題は異なるが難易度は同じ。答えのヒントが与えられ、監視を最小限にとどめ、自己採点をするように伝えられる
            = 生徒たちがいくらでもカンニングできる状況に
          • 全日の結果と比較しどれくらいカンニングしたかを判断
        • 上記以外にもあらゆる種類のテストを行った
          • スピード・テスト:所定時間内に回答を行うテスト
          • 懸垂や幅跳びのような身体能力テスト
          • 自宅で行うことのできるテスト
      • 結論:こういったテストでは多くのカンニングが起きる、平均して正直な採点の50%も特典が高くなった
        • 一貫性は期待より高くなく、はっきり特定できるカンニンググループがあるわけでも、正直な生徒のグループがあるわけでもない
        • 正直さのような特徴は状況に大きく左右されるもの(ー大多数の子供たちは)
        • ”固有の性格という観点だけ判断し、状況の役割をなおざりにすると、人間の行動を決定している真の原因を見誤る”(pp215-216)
  • 背景の重要性
    • 背景の重要性を理解し、環境の中の比較的小さな特定の要素がティッピング・ポイントの役割を果たすことがわかれば、このような犯罪に対する敗北主義は転倒するだろう。環境のなかのティッピング・ポイントは変えることができる。割れた窓を修理し、落書きを消せば、最初の犯罪を誘発するシグナルを変えることができるのだ。犯罪は理解するだけのものではなくなる。防ぐことができるようになる。ここにはもっと幅広い可能性があるのだ。--p126
 

第5章:「150の法則」という背景 人の行動に感染する効果的な集団の規模

 
  • 宗教運動はどのようにしてはじまるのか?例としてメソジスト運動(18世紀後半から19世紀前半までに英国、北米で急速に拡大した)
    • 創始者のウェスリーはカリスマではなかった
    • 彼の天才は組織づくりにあった。ウェスリーは英国や北アメリカを旅しながら、おびただしい数の民衆に野外で説教をした。しかし、ただ説教しただけではなかった。それぞれの町に長期間逗留し、特に熱心な改宗者を集めて、いくつかの信仰共同体を組織し、さらにそれを十数人程度の組に分割した。ーp234
    • もし人々の信仰と行動に根本的な変化を、永続的で他人の模範になるような変化をもたらしたいのなら、新たな信仰が実践され、表現され、育まれるような共同体を創設する必要がある ーp235
  • 小規模で緊密なグループには、あるメッセージなり発想が持つ潜在的な感染力を強化する力がある。->どの程度のグループがもっとも効果的なのか?
  • 150の法則
    • プリンストン大学で記憶を専門にしているジョナソン・コーエン、「どうやら、学習と神経系の構造の双方のせいで、人間にはある一定の限界が組み込まれているようである。つまり、このあたりに人間のチャンネル・キャパシティをとどめている境界線があるらしい」
    • 人間が一度に扱える情報量は限られている
      • 死なれたら本当に打ちのめされる人:大半は平均して12名くらいあげる → 共感グループ
        • 時間、感情的負荷によりこれくらいの人数になっている
    • 「人間の社会的チャンネル・キャパシティ」 イギリスの人類学者 ロビン・ダンバーによる
      • 脳の大きさはグループの規模に比例する。集団生活の規模と新皮質の大きさが比例する。
      • より大きな社会の複雑さを処理するのに能が進化
      • ダンバーの導き出した、新皮質率と集団生活の規模の公式をホモ・サピエンスにあてはめると147.8人=ほぼ150人という結果
      • 軍事組織も同じ:軍事組織の立案者たちは長年の経験から、機能的な戦闘部隊の構成員は実質的に200名を超えることはない
      • 150以下であれば、規模なしでも同じ目標を達成することができる
        • 自ずと秩序が維持できる規模
      • ヒュッテル派と呼ばれる宗教グループ:自給自足の農業共同体を維持
        • 厳格な方針:共同体の人数が150人に達するたびに2つにわかれ、新たな共同体として出発する
  • ゴア・アソシエイツ社の150人戦略
    • 工場の上限人数を150人程度までにしている
    • 「交換記憶」機能:人は他人を通じて情報をたくわえている
    • ゴアでは効率性の高い制度的な交換記憶がある
    • 会社を一体化させるためにーー社の特殊な方針を従業員全体に行き渡らせるためにーーゴアではむしろ、なかば独立した小さな部分に分割する必要に迫られた。これは感染のパラドックスだ。感染的な運動を生み出すには、まず最初に小さな運動体をたくさんつくらなければならない場合が往々にしてあるということだ。
 
 

第6章:商品はどのようにして感染するのか?Case Study1 エアウォーク社の販売戦略から学ぶこと

  • エアウォーク社:サンディエゴ郊外を本拠地として、ビーチスポーツ・スケートボード関連のティーンエイジャー向けのアパレル会社。エアウォークと呼ばれる靴が爆発的に売れた。
  • ジェフリー・ムーアのキャズムの話
    • 「先見性のある小企業の目的は飛躍的前進を遂げることにあるが、実際家である大企業の目的は勝ち目のある変革ーー穏やかで節度のある予測可能な進歩ーーを遂げることにある」とムーアは書いているーp266
    • ムーアの主張では、初期採用者と初期多数派の態度は根本的に相容れない。新しい改革の波は、あるグループから隣のグループへすんなりと移行していくものではない。両社の間には大きな亀裂がある。どんなハイテク製品も、初期採用者の枠を超えられないかぎり、失敗する。なぜなら、その製品を作った会社が、初期採用者を完全に納得させるアイディアを、初期多数派のメンバーを納得させるようなアイディアに変換する方法を見いだせなかったということを意味するからだ。ーp267
  • 感染を媒介する翻訳者
    • メイブンやコネクターやセールスマンの手にかかると感染的になるのは、このようにして余分な細部を削ぎ落とし、他の部分を強調することによって、メッセージそれ自体により深い意味が出てくるからなのだ。もし、感染をスタートさせたいならーーその対象が靴であれ、行動であれ、ソフトウェアであれーーこういった方向でメイブンやコネクターやセールスマンを利用すべきであり、イノヴェーターからのメッセージをわたしたち一般人にも理解できるようなものに翻訳してくれる、手段なり人物なりを探し出さなければならない。ーp273

最後に

自分なりに本書で述べられていた概念を簡単な概念図にしてみました。ちょっと違うかもしれませんが、これはあくまでも現時点での僕の理解です

 

感染をスタートさせる役者については第2章で述べられていました。それを翻訳する素材については6章で述べられていましたが、それはセールスマンやメイブンが実施していることです。また、広げる単位を150人くらいに留めるなども重要な要素として語られていたと思います。さらに、それらをしっかり伝播させる力として粘りの要素と背景の力があるということになります。

 

詳細については本書を読んでみてくださいね。

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 こちらもおすすめ。

poo-tee-weet.hatenablog.com

 

 

ネットワーク効果を理解するー第1章〜第3章まで箇条書き要約『急に売れ始めるにはワケがある』

大分前に文庫本で読んだが内容をいまいち覚えていない。ただ今ちょうど、一気に何かが浸透するときの背景や主要な要因ってなんだろうということを考えていたので、読み返すことにした。量が多いので、まずは第3章まで。

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もくじ

 

第1章:爆発的感染、その3原則 ティッピング・ポイントへ至る指針

ティッピング・ポイントの3原則

  • 少数の法則:Influencerが起点となる
    Influencer=社交的、活動的、仲間内で影響力がある
  • 粘りの法則:メッセージに強い印象がある
    物議をかもす、破壊的なメッセージ
  • 背景の力:集団でいると責任が薄れる=傍観者問題

第2章:「80対20の法則」から「少数者の法則」へ 感染をスタートさせる特別な人々 ・・・原則1

社会的伝染で重要な役割を果たす人物
  • 媒介者(コネクター)
    • チェーンメールの例:関係の六段階分離、その中間にハブとなるような人物がいた
    • 条件の一つ:知り合いが多い
    • ”弱い絆”を作ることを得意としている
    • コネクターは多種多様な世界を融通無碍に行き来する能力があり、好奇心、社交性、エネルギーなどの複合的要素の関数
    • 社会的にかわの役割
  • 通人(メイブン)
    • ただの受け身の情報収集家ではなく、どうすれば良い買い物ができるかがわかったらそれを他人に教えたがっている
    • 他人の問題を解決することによって、自分の問題ー自分の感情的必要性ーを解決している人
    • 情報ブローカー的存在
    • データバンク
  • セールスマン
    • 説得する技術を持つ
    • 説得されて行動を起こすきっかけを作る存在
    • 影響力のある個性:他人を自分のリズムに引き込み、相互作用の流れを支配する

第3章:粘りの要素 情報を記憶に残すための、単純かつ決定的な工夫・・・原則2

  • セサミストリート=学習意欲の伝染をつくりだすことによって、貧困とムチの伝染の拡大に対抗することを目標に
  • メッセージの特別な性質が「粘り」
    • 記憶に残るか?変化を生み出すほど、誰かに行動をうながすほど、記憶に残りやすいか?
    • 情報過多の状況=クラッター問題(クズ問題)
  • セサミストリートの例
    • 一点突破の洞察から成り立っている=子供の注意を引き続けることができれば、教育になるという考え方
    • ディストラクター:モニターで特定のビデオなどを見せ、子供が気を引いているところ、気をそらしたところを逐次記録
      • 粘り検出装置として役だった
    • 子供番組の神話として子供は動物を見るのが好きだというのがあり、動画を見せたが、興味をひかない
    • 番組は一区切り4分を超えては行けない(せいぜい3分以内に収める)ことが証明された
    • 会話を単純にすることや大人向けテレビの手法をそのまま踏襲しないほうがいいことがわかった
    • フィラデルフィアの実験で街の場面が興味を引かないことがわかあり、全てなくした
    • 視標追跡
      • 目線がどう移っているかを記録することで、目的の対象に注目が向いているか確認する
      • ビッグバードが名前を探しにいくストーリー: 子供の認知率は通常90%に対して50%
      • 就学前の子供には単純に理解できないなかったから
      • 粘りの要素: 相互作用がある、繰り返される
  • 正しい状況に置けば、誰もがうなずかざるをえないような、単純な情報の引き立て方があるのだ。ーp181
  • 自分メモ:対象が注意を逸らさないような粘り気を作る必要性。そしてそれはだいたい小さな変化

第3章までの感想

  • 第3章までで「少数者の法則」と「粘りの法則」の2つの法則について語られた
  • 「少数者の法則」で出てくるコネクター、メイブン、セールスマン、この要素を自分がやろうとしている活動の中でちゃんと存在しているか確認する必要がある
  • 「粘りの法則」の応用が難しい感じがする。何が粘りのあるものかは、最初はわからず、おそらくやっているうちに、結果的に「これが粘りだった」と気づくものなのではないか。意図的に作れたらすごい。
  • ただ、記憶に残る、何か行動を促すためのメッセージの仕方は意識し、何らかの形式でモニターしながらコンテンツの内容を変えていくのが良いというのは実践してみようと思った。

Amazonで検索してみたら、もう中古しか売られていない様子で絶版されているのかな。。事例がまどろっこしいが、非常によい本なので、重刷してほしい。もしくはKindleで提供とか。

 第4章以降はまだ読んでいる途中ですので、追ってアップデートします。

 

#コミュニティを考える 。『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』を読んだ。

『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』を読んだ。
 
本書は元編集者である佐渡島庸平さんが、編集者という仕事についてそれそのものを破壊するのではなく情報爆発する中でその環境にあわせて行動や考え方をアップデートしていく必要がある。そういったことをエッセイのような感じで書かれた本だった。
 
最近Ansible Nightsやらもくもく会やら社外エンジニアの方々に開けた場を提供する活動を業務の1割くらいの労力(と業務外含めるともっとか)を割いて活動しているのですが、その中でやはりコミュニティってどのように育てていくのが良いのかなということを少し考えていて、ちょうど福岡出張の機内で読む軽い本でも買おうかと思って有隣堂に平積みされているのを見つけて即購入した。(ちょうどAnsible Nightで講演していただいた藤川さんも講演の中でこの本が少し触れられたりしたり)
 
タイトルである、『We are lonely, but not alone.』は『宇宙兄弟』の中のあるシーンのセリフらしい。筆者によるとインターネットにより誰もが情報を手に入れることができるようになった(情報爆発)ことにより、みんないつでもつながっている(not alone)が、孤独を感じる状況のなかでコミュニティの重要性が増しているという。
 
出版などのコンテンツビジネスのファンコミュニティを作るという話でちょっと僕が関わりはじめたこととは違うが、いくつか参考になるところがあったので備忘録的に残しておく。
 
■コミュニティに必要な重要要素:
・余白の存在
・常連客の存在
・仮想敵を作ること
・秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること
・共通の目的やベクトルを持つこと
ーp147より
 
■コミュニティにおける安心安全の確保の重要性:
「立ち上げ→安心安全の確保→熱狂→拡大」のサイクル。安心安全が確保されていない状態だとそのコミュニティ内での問題(トラブル・批判)が増える傾向にある。
ーp165からざっくりまとめ
 
単純なマスマーケティングが通用しにくくなって来ている昨今、ブログなどによるコンテンツマーケティングやこの本でも取り上げられているようなファンマーケティティング/コミュニティマーケティングのようなものの情報が最近急激に増えて来ている気がする。このコミュニティマーケティング的なものってインターネットの黎明期においても、ある特定の興味関心を持つグループの掲示板経由でオフ会が開かれたり、Twitter経由で人とあったりと、人のつながり方が変化したことで自然とリアルでフェイス・トゥ・フェイスで会いたいとかいう思いがあって生まれてきたものだと思う。このインターネット的な出会い方や情報の広げ方が最近のエンタープライズ(スタートアップのほうがそういう傾向が強いのかもしれない)にも浸透して来ているのだなと思った。
 
また、コミュニティという文脈においては、誰かが必要としている「サード・プレイス」のような立ち位置であるとの考え方も僕は持っていて。「サード・プレイス」は昔から仕事が終わったらそのまま家に変えるのではなく、行きつけのバーに行ったり、カフェに行ったりする、そういった日常以外の関係性を構築したりや時間を使ったりすることができる場であるという意味で、家、仕事に次いで第3の場所を人々は必要としているしコミュニティはそういうところで生まれるという話だ(またサード・プレイスがどういう性質を持っているのかなどが書籍ではいくつもの事例をベースに語られている)。僕が関わりはじめたエンジニアコミュニティは、より一層拡大をしている。それはインターネットの裏側の技術が日進月歩で変化していくことへの恐れやそういった新しい技術への興味だけが拡大を促しているのではなく、そういった背景とあわせて、家と仕事以外のもう1つプライベートに近い付き合いができるような場、誰もが平等な場を必要としているのではないかと感じている。
 
ファンコミュニティを作るということとあわせて、サード・プレイス的な場を作ることが重要と今の所考えているところです。ぜひマーケティングの人から経営企画などに携わる多くの人に読んでもらいたいと思いました(NPOやボランティア組織を運営している人にも多くの気付きがあるのかも)。