Poo-tee-weet?

とあるIT業界の外資系社員の戯言。旅半分仕事半分の人生を目指しています。書いていることはだいたい戯言。プーティーウィッ?

インターネットと世界はどう変化するか ー『第五の権力 Googleには見えている未来』を読んだ


ちょっと話題になっていると思って読んでみたら、非常に読みやすく、示唆に富んでいる。Googleの会長 エリック・シュミットが書いた本だと書いてあったが、共著のジャレッド・コーエンが書いてるんじゃないかな、と思った。

原著の方のタイトルは、『THE NEW DIGITAL AGE   Reshaping The Future of People, Nations and Business』。”第五の権力”というキーワードは僕が覚えている限りでも冒頭の一箇所のみに使われているので、サブタイトルの”Googleには見えている未来”という日本人にはキャッチーなタイトルをつけたかったんだろう。




それはそうと、この本はインターネットの全能さをいい意味でしか捉えられていない人に取っては危機感を感じさせてくれるような内容になっている。目次が下記のようになっていて分かると思うが、インターネットと政治・人との関わりがどのように変化していくことが予想されるかといった内容が中心である。現在の傾向も踏まえた具体的なシナリオを交えて解説する。


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 目次
 序章 自由な表現と自由な情報の流れを可能にする新しい力・インターネット
 第1章 未来の私たち
 第2章 アイデンティティ、報道、プライバシーの未来
 第3章 国家の未来
 第4章 革命の未来
 第5章 テロリズムの未来
 第6章 紛争と戦争の未来
 第7章 復興の未来
 終章 私たちの結論
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個人的に気になったところを引用も含めて書いておく。

Makersがテロリズムを支える


ここ最近、3DプリントやArduinoなどの技術が話題に上がることが多いMAKERSと呼ばれるムーブメントだが、そのよい面ばかりが取り上げられることばかりである。考えてみれば普通の事かもしれないが、MAKERSに代表されるようなオープンな技術というのはテロリズムを支えてもいる。

このように”いいものだ”決めつけていたインターネットやそれにつながることに対して、気づきを与えてくれるところが、この章のみならず至るところにある。

 2009年にイラクを旅行した際、誰でも簡単にテロリストになれることを知って、私たちはショックを受けた。ある陸軍大尉に聞いた話だが、アメリカ軍のパトロール部隊が最もおそれていたものが、道路脇に仕掛けられた即席爆発装置(IED)だったという。

中略

 バイブレーション機能をオンにした携帯電話に、爆弾の起爆装置をテープづけしてつくった爆弾は、その携帯に電話をかけるだけで、遠隔から爆発させることができた(ただちにアメリカ軍は対抗策として、携帯電話の通信を遮断するための電波妨害システムを開発したが、あまり効果はなかった)。
 かつては高度で実入りのよかった(何千ドルも報酬を得ることができた)暴力的活動が、いまや多少の工夫をすれば誰にでもできる、タバコで報酬を支払われるようなありふれた仕事になっていた。
 もしも武装勢力の携帯電話起爆型IEDが、高校の理科実験のように簡単に作れるのだとしたら、この先一体どうなるのだろうか。こうした「実験」は、アンドロイド開発者のアンディ・ルービンが、技術の「メイカーズ現象」と呼ぶものが生み出した不幸な結果である。ちなみにこの現象は、テロリズム以外で考えれば、喜ばしい進展として称賛されることが多い。
ーpp235-236 第5章 テロリズムの未来

 インターネットの”分離壁


 最近イスラエルに行ったということもあり、この文章も気になった。

 こうしたマイノリティ集団を対象とした電子的隔離政策は、今後あたりまえになるだろう。
 国家はそれを行う意思をもち、それを可能にするデータへのアクセス権を持っているからだ。
 こうした計画は当初、国民の支持のもとに、害のない計画として始まるかもしれないが、やがて国内のパワーシフトとともに、抑圧的で過酷な政策に形を変えていく。
 例えばイスラエルの超正統派が、事前承認されたウェブサイトだけを許可するホワイトリスト方式の、「コーシャー(ユダヤ教の掟にかなった)・インターネット」の創設を求めてロビー活動を行い、その要求が通ったとしよう。
 超正統派のためにインターネットの「特別車線」をつくるのは、子ども向けの「安全」なインターネットサイトのリストをつくるのと変わらないという理屈だ。そして数年後、超正統派が選挙で圧勝し、政権をとれば、彼らがまっ先に下す決定は、イスラエル中のインターネットを「コーシャー」に変えることだろう。こうして、国内のマイノリティ集団のインターネットアクセスはさらに制限される。
 この政策の最も気がかりな影響は、アクセスを制限された集団が、文字通りライフラインを断たれ、著しく力を失うことだ。
ーp292 第6章 紛争と戦争の未来

これを読むと、イスラエルパレスチナを分離する壁がインターネットの世界にも現れるということをイメージさせられる。この本でも何度も延べられているように、現実と仮想の世界の「2つの世界」で人々が暮らしていくことが考えられ、その双方での活動が求められるようになっていくということが分かる。政治的な活動でも、個人を守るためにもどうように現実と仮想の双方を考える必要が出てくる。


雑感


この手の国際政治系の話は大学以来あまり読んでなかったので、久しぶりに読んでみたら面白かった。この本自体が読みやすいからかもしれないが、特に上記に引用した様なところには興味を持って読み進めた。

インターネットにつながることの良い面ばかりを見がちななかで、この本に述べられる危険性も含めて世界的な視座を持っていきたいものだ。


第五の権力---Googleには見えている未来

エリック・シュミット,ジャレッド・コーエン ダイヤモンド社 2014-02-21
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