Poo-tee-weet?(プーティーウィッ?)

ビジネス書などに関する紹介・感想をメインに記事を書いています。経営、組織論、テクノロジー、マーケティング。

他者を眺め解決の糸口を見出すナラティブ・アプローチー『 #他者と働く 』を読んだ

社会人10年目にしてナラティブ・アプローチというのを、今回紹介する『他者と働く』を読んで知った。社会構成主義という考えから出てきているようで、最近遅ればせながらもアジャイル/スクラムに関する書籍などを読んだり、研修を受けたりする中で、今まさに「対話(ダイアローグ)」に関心があり、ちょうどTwitterやNoteで著名な方が紹介されていたりしたので、Kindle版をポチって読んでみた。バスで本を読むとたいていの場合車酔いをするのだが、本書は何故かそんなこともなく一気に読み進めていた。

インド、ジャイプールにて。

「溝に橋を架ける」

本書では、他者と働く際にコミュニケーションがうまくいかないということが多くある中で、どのようにして良い回答、結果を出していくかということが書かれています。その中心にあるのが、自分自身のナラティブ(文脈)と対象となる相手のナラティブです。必ずと言っていいほどその間には溝があるため、自分自身が持つナラティブを一度脇に置いて、相手が置かれているナラティブを観察し、介入をしていく、ということが語られている

具体的には、ハーバード大学のジョンF.ケネディ政府大学院の公立リーダーシップセンターの創始者であるハイフェッツが提唱した適応課題に挑むためのプロセスに習い、以下の4つのプロセスを通して他者との「溝に橋を架ける」ことを述べている

1. 準備「溝に気づく」
2. 観察「溝の向こうを眺める」
3. 解釈「溝を渡り橋を設計する」
4. 介入「溝に橋を架ける」

ここ最近、イノベーションが起こせない組織、やるべきなのにやれない組織、に対して向き合うことが多いのですが、その中で一番強く思って“しまっていた”のは、多くのマネジメント層(40後半以降)はマネジメント(管理ではない)スキルが欠如(もしくは不足)しているということです。そのスキルが足りないということにはほぼ介入の余地がないのですが、相手(ここでは今のマネジメント層)が置かれているナラティブを解釈すれば何か糸口が見つかるのではないかと希望が出てきました

この僕が持っていたマネジメント層の苦しみ、という事象について、本書では、経営者の「孤独状態」として表現され、権力を持ってしまったために誰とも弱音を共有できないという課題を持ち、現場は上の立場の人を悪者にすることで誰のせいにもしないという逃げが生じていたりする。このような事象は共感する部分が多くありました。それに対してどのように解決すべきかということについても実例をデフォルメしながらも具体的に述べられていて色々と考えさせられることが多かった。

具体的な話は本書を読んでもらえればと思うが、本書で紹介されている具体的な実践、そして対話を阻害する罠は以下のようなものがある。

実践:

  • 実践1. 総論賛成・各論反対の溝に挑む
  • 実践2. 正論の届かない溝に挑む
  • 実践3. 権力が生み出す溝に挑む

対話を阻む5つの罠:

1. 「気づくと迎合になっている」
2. 「相手への押しつけになっている」
3. 「相手と馴れ合いになる」
4. 「他の集団から孤立する」
5. 「結果が出ずに徒労感に支配される」

さいごに

誰もが共感するであろう具体例がたくさんある内容なので、世の中のリーダー層、マネジメント層はもちろんのこと、しっかり組織に見つめ、その中で直面するあらゆる課題をチームワークを通して解決していきたいと思う情熱のあるすべての人に読んでほしいと思った。また、自分自身ここ最近の組織論ブーム再燃とともに、スクラムの考え方を学びもっと人や組織にしっかり向き合っていきたいという意識(逃げてはならないという意識でもある)の再発見にも繋がった。自分自身の活動にも活かしていきたいし、他者へのインフルエンスという意味で、紙の本も買って誰かに貸してあげるなどしてみようか

蛇足:本書の中では僕が今所属しているレッドハットという謎の会社のCEOの例も書かれている。『オープンオーガニゼーション』で述べられていることは、多少誇張されている可能性もあるが、最初はたしかに色々と批判もあったようだがここ5年くらいはポジティブなコメントしか聞いたことがない。何レベルも上の立場にいる彼と、僕も一度直接会話したことがあるのだが、誰にでもフレンドリーなタイプだと感じた。それもいろいろな対話を超えてそのようになってきたのだろうな、と本書を読み改めて感じた。