Poo-tee-weet?(プーティーウィッ?)

ビジネス書などに関する紹介・感想をメインに記事を書いています。経営、組織論、テクノロジー、マーケティング。

IoTの衝撃とソフトウェア開発について - HBR 4月号『特集 IoTの襲撃』

IoTがGartnerのハイプ・サイクルにおいてピークを示している。バズワードと化していると言ってもいいかもしれない。一方でクラウドなどは幻滅期に入っている。IT業界界隈ではクラウド、とくにAmazon Web Serviceに代表されるようなパブリック・クラウドは避けられない現実として認識されているように思える。



最近はクラウドというよりIoTやDevOpsと謳った方が人が集まるようにもなっている。Gartnerのハイプ・サイクルはその意味では現実をうまく表している。最近仕事でIoTについて考えることがあったので、ハーバード・ビジネス・レビューの『IoTの衝撃』を読んだ。幾つか考えさせられることがあったので備忘録として書いておきたい。


すべてがソフトウェア開発に


iPhone6にて撮影

IoTと聞くとデバイスの分野に目を向けられがちなところがあるが、そうではない。IoTは端末側とシステム側のエコシステムを如何に形成していくかが肝になる。今回のハーバード・ビジネス・レビューではいくつかの事例も取り上げられているので、それは本書に委ねるとして、単一製品の提供からスマートデバイスとの連携によるサービス化、さらには他エコシステムとの連携、といったように事業領域を広められるか否かがビジネスを拡大できるかを左右する一因であるといえる。そういう意味で、下記に引用するGEなどのような全方位的にビジネスを行う複合企業がこの領域において、返り咲く可能性が高い。

接続機能を持つスマート製品を内製する企業は、重要な技術とインフラを社内に持ち、製品の特徴や機能性、データを思いのままにしやすい。くわえて、技術開発の方向性を左右する力と先行者利益を手に入れる。他社にはない学習効果が短期に得られ、それが競争優位の維持に役立つ。たとえば、たいていのメーカーではソフトウェア技能は十分に育成されていないが、GE会長兼CEOのジェフ・イメルトは最近「事業会社はすべてソフトウェア企業になるだろう」と発言した。接続機能を持つスマート製品の性質に鑑みると、なぜこの言葉に真実味があるのか、なぜソフトウェア開発力を自前で持つことが重要なのかが鮮明になる。
ーp61 IoT時代の競争戦略

DevOps+ビッグデータ


あらゆる端末がシステムとつながり、エコシステムを形成していくには、顧客にとって有用なサービスを継続的に提供する必要がある。「継続的に」という意味には、アップデートを繰り返すことや、作っては捨てを繰り返すことでもある。

端末単体の機能では差別化できなくなる状況において、スマートフォンアプリとの連携による経験/体験を作ることが重要視されるようになっている。ウェアラブル端末のFitbitやJawboneもスマホと連携し、SNS機能を持ち友達と共有する、そういう体験を作ること自体がサービスとなっている。こういったサービスを如何に改善して、よりよいものにし、顧客を囲い込むかが生き残るための戦略には不可欠になっている。

この意味で、IT業界でははやり言葉の、DevOpsやビッグデータはIoT時代に必要不可欠な技術要素であると言える。ただ、先の引用に書かれているように、「内製」「自前で持つ」ということが不可欠となってくる。これは日本のIT業界においては悩ましいところだと思う。なぜなら、多くの企業はITベンダーに開発を委託しているからである。日本独自のやり方であっても、高速にアプリケーション/サービスを開発していくすべを実践していかなければ、グローバルな競争力は持てるはずがない。

この技術によって実現するのは、製品アプリケーションの迅速な開発・運用だけではない。長期的変化を示すかつてなかった種類の膨大なデータが製品内外で生み出されるかもしれず、それらの収集・分析、共有も可能になるのだ。接続機能を持つスマート製品向けにテクノロジー・スタックを開発、支援していくには、多大な投資に加えて、ソフトウェア開発、システム・エンジニアリング、データ解析、オンライン・セキュリティ分野の専門性など、多様な最新技能が求められる。これら技能は、製造を本業とする企業にはまず備わっていない。
ーp45 IoT時代の競争戦略

これらの高速開発の技術をいちいち検討しているようでは機動性はなくなってしまう。これからのITは吟味されたものを迅速に提供し、アフターサービスもしっかりとする、というようなところが求められるだろうと思う。ただ、ベースとなる技術の信頼性、セキュリティなど考えることはたくさんありすぎる。これらを鑑みてどう方針を作っていくのか。これは多くの企業で議論がなされるのだろう。


GEのジェフ・イメルト氏も言うように、IoT/IoEの骨頂は、すべてのモノがソフトウェア化する、ということにある。そのとき肝になるのは、ソフトウェアの開発であることは言うまでもない。という意味で、製造業にとってもITにとってもIoTは津波にもなり得る大きな波である。

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(ハーバード・ビジネス・レビュー) 2015年 04 月号 [雑誌]

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