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リソースが限られた状況における指南書?『ゲリラ戦争』 チェ・ゲバラ著

営業活動や企業活動はしばしば軍事用語を用いてその体制や仕組みを考えることがある。例えば、流通戦略で言えばLogisticsという言葉が使われるが、軍事用語でもLogistics(兵站)は、戦略・戦術などと合わせて重要なファクターである。

一方でこのLogistics(兵站)というのは、資源・資金力が伴わないので、小さな組織ではそれを実現することが難しい。つまり、人数が少ない企業では、大企業の真似をしていても意味が無いといえる。

僕も仕事の中で、Logistics(兵站)を意識することが大いにあるが、大抵の場合、人的リソースが足りないということが、ことのはじめに課題に上がることが多い。そういう場合大抵は資金的なリソースも足りないというのが多い。

というわけで、大企業のようにリソースが無い中でどのように資本主義という戦争を生き抜いていくか、あるいは何らかの革新的なことを起こそうとして、相手先を打ち負かすかということのヒントになりそうだなと思い、この『ゲリラ戦』を入手した。

『戦争論』はクラウゼヴィッツの方が詳しいだろうが、それについても深い知識をつけたチェ・ゲバラが書いた本である。『モーターサイクル・ダイアリーズ』など本や映画でも有名な人であるので、この人についての紹介は置いておき、本書で気になったところを書いておく。


マサダ要塞(イスラエル)にて撮影

ゲリラ戦における7つの黄金率


チェにとっては、魚が水に住むごとく、人々はゲリラ戦士になるべきもの、であった。戦術レベルでは「七つの黄金律」は今も有効であり、創造的に使われさえすれば勝利は確実である。
  • 負ける戦いはしないこと。
  • つねに動き続けること。ヒットアンドラン、攻撃して撤退する。
  • 敵は武器の主要供給元であると考えよ。
  • 動きを隠せ。
  • 軍事行動では奇襲を活用せよ。
  • 余力があれば新しい縦隊を作ること。
  • 一般論として、三つの事に留意しつつ進めること。すなわち、戦略的防衛、敵の行動とゲリラ行動のバランス、そして敵の壊滅。
ーp20 前書き


この「七つの黄金率」はリソースが少ない環境において意識すべきことが凝縮されている。これらについての詳細は、本書において具体的に書かれている。

ヒットアンドランや奇襲という言葉にあるように、ゲリラ戦においては、何度も敵軍に対して打撃を与えることが必要で、かつそれが予測しがたい方向・タイミングで実施することである。企業活動においても小さい企業は機動性が高いので、より予測しがたい行動が取りやすいと思う。これにより大企業に対して打撃を与えていく、というのが必要になる。


大衆からの支援


最初の問いについて考えてみよう。ゲリラ戦の戦闘員は誰か?との問いである。戦いの一方には抑圧者と、その手先で統制がとれて十分武装された正規軍で構成されるグループがいる。多くの場合、彼らには外国からの援助と抑圧者の恩恵にあずかっている政府官僚の助力があり、その対極にいるのはその国または地域の人民である。ここでゲリラ戦は大衆の戦いであり、人民の闘いであることを強調しておく必要がある。武装核としてのゲリラ隊は、人民の戦う前衛であり、その偉大な力は人民大衆に引き出されている。火力装備において劣るからといって、ゲリラ隊が正規軍に劣ると考えてはならない。ゲリラ戦は民衆の大多数に支持されながら、抑圧からみずからを守るための武器を少量しか持たない側が行使するものである。

ーp31-32 第一章 ゲリラ戦の基本原則


ゲリラ戦においては仲間を増やす必要がある。その地において、何らかの生産拠点をつくるためにも、隠れ家を作ってもらうという支援をしてもらう必要があるからだ。大衆の協力を得ることにより、正規軍にもまさる力を持つことができるとチェ・ゲバラは言う。

仕事に当てはめてもそうだろう。自社だけでは出来ないのであれば、パートナーの会社からの支援を得て何かをする、というのが必要になる。お互いに営利目的ではあるが、政治的にX社を打ち負かしたいという共通の利益がるのであれば、こういうのをしっかりと活用すべきだ。また、営業的にだめでもエンジニアから好まれている、ということも重要な要素であると思う。


戦略と戦術


軍事用語でいう戦術とは、大きな戦略的目的を達成するための具体的方法を指す。ある意味で、戦術は戦略を補足するものであり、別の意味では、戦略のうちのより具体的な放送である。目標達成の手段として、戦術は戦略に比べて可変であり、最終目的に比べて柔軟で、戦争を通じて絶えず修正される必要がある。戦争継続の期間中ずっと変わらない戦術目標もあれば、変化する戦術目標もある。ゲリラ作戦は敵の行動に応じて修正すべきであると考えねばならない。
ーp42-43 ゲリラ戦の基本原則


ここではクラウゼヴィッツが詳しいとの注釈があったりしたので、そちらの方をしっかり読んだ方がよさそうだ。だが、ゲリラ隊の特徴である機動性を意識しているようで、戦術については、柔軟に耐えず修正していく必要があることについて言及している。

大企業ではこの戦術を変更するのでさえかなりの労力がいるだろうが、小さい会社であれば、個人に任されている範囲もかなり広いので、修正はごく簡単にできるだろう。そういった機動性を意識した活動が必要である。ただし、戦術というのはあまり多すぎたりするとその効果指標などがわかりにくくなるという点にも注意が必要だとは思う。

戦隊の足並み

ゲリラ隊全体の行軍速度はその中の一番足の遅い兵士のそれに合わせるべきである。ゲリラ全員の行軍速度を一致させることは、隊の人数が一〇人の場合よりも、二〇人、三〇人、四〇人の場合に、はるかに困難になる。

ーp.58


番外編・・。『ザ・ゴール』でのハイキングの事例はすでにチェ・ゲバラによって証明されていた!一番足の遅いものを先頭にし、遅い者に速度を合わせる。すでにここでボトルネックの考え方をチェ・ゲバラはしていたと見受けられ、その洞察力はすさまじいと思う。 



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