Poo-tee-weet?(プーティーウィッ?)

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ヴォネガット甦る?ー『はい、チーズ』を読んだ

カート・ヴォネガットとの出会いは、大学の時にヴィレッジヴァンガードで『タイタンの妖女』を手にとったことだった。それ以来いくつかカート・ヴォネガットの本を読んでなんとなく好きになっていた。といった位のファンなりそこないなのですが、このブログの名前も実は『スローターハウス5』で何度か鳥が鳴くときに使われたブーティーウィッを拝借している。

今回の未公開のカート・ヴォネガットの短篇集は、大森望さんが翻訳されていて、この方は(解説を読んでもらえればすぐに分かるが)かなりのヴォネガットファンでそれで大学でもヴォネガットの研究をされていたそうです。

カート・ヴォネガットの小説はSFというふうにカテゴライズされるが、今回の14の短編では、いわゆるSFっぽくないのも含めて面白い話が盛りだくさんでした。また、シニカルだったり、ユーモアが感じられる話も多く、その点でも良い短編集だったかと思う。いくつか気に入ったところを引用しておく。

「エド・ルービーの会員制クラブ」


ヴォネガット作品の舞台としておなじみの架空の街、ニューヨーク州イリアムで、思いがけずたいへんな事件に巻き込まれてしまう夫婦の物語。(訳者あとがきより引用)

「たがのはずれた夜―たがのはずれた日だった」とクレア。「いったいなんの意味があったのかしら」
「大きな意味がありましたよ。勇敢で正直な人々のおかげで」
「あなたのおかげで」
「ご主人のおかげですよ」とミッチェル医師。「ぼくについては、生まれてこのかた、こんなに楽しい思いをしたことはありませんでした。人間はどうやって自由を得るか、どうやって自由でありつづけられるかを学びました」
「どうやって?」とクレア。
「見知らぬ人間の正義のために闘うことによってです」とミッチェル医師。
ハーヴ・エリオットはどうにか目を開けることができた。「クレア―」
「あなた―」
「愛してる」とハーヴは言った。
「未だ薬が効いてますからね。いまの言葉は百パーセントの真実ですよ」とミッチェル医師が口をはさんだ。「もし少しでも疑っていたらの話しですが」
―p135 ”エド・ルービーの会員制クラブ”


ヴォネガットからウォルター・J・ミラーへの手紙


こちらはなんとなく、文章の書き方が好きだなあと思った文。短篇集の付録でGEを辞めて小説家になるときに書いた手紙のようだ。ウォルター・J・ミラーが誰だかがよくわからない。

この手紙は、自己憐憫に満ちた、気取ったゴミだ。でも、作家が書きそうに見えるタイプの手紙ではある。ぼくはGEを辞めるんだから、もし作家じゃないとしたら、何者でもないことになる。
―p353”ヴォネガットからウォルター・J・ミラーへの手紙”


はい、チーズ

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