Poo-tee-weet?(プーティーウィッ?)

ビジネス書などに関する紹介・感想をメインに記事を書いています。経営、組織論、テクノロジー、マーケティング。

より少なく、しかしより良く 『エッセンシャル思考』を読んだ

米国で人気になっているのを知っていて英語で読もうかなと思ってWishリストに入れたまま放置していたらいつの間にか翻訳版が出るとのことで、早速Amazonで予約注文して読んだ。軽い感じで読みやすいが、タイトルにあらわれているとおり本質的なことがたくさん散りばめられている。
 
最近『How Google Works』(記事はこちら)や『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(記事はこちら)などでもしょっちゅう取り上げられている、みんなわかっていても無視するか忘れるかして、自分たちがしていることのほうが異常であるとも思わない、パレートの法則などにも通づるないようは最近のはやりなのだろうか。
 
その辺は十分わかってきているつもりなので、改めて気づきのあったところについてかいつまんで感想含め書いておく。

睡眠について

最近は仕事を長時間することに対して否定的な意見が多くなった。実際にそれはあらゆる実験や統計などで明らかになってきているのだが、それが日本では”まだ”なかなか通らなかったりする。確かに海外と接して仕事をしていると、欧米人は仕事に対してのコミットメントも強いのだが、家族を大事にすべきであるという雰囲気がある。例えば、ある週に電話会議を米国時間の夜に行ったとする、まだ話し足りなくて翌日も同じ時間から電話会議ができるかと確認すると、「今日の妻との約束を明日にするので勘弁して欲しい」ということを言ってくる。日本ではまだこの文化はなかったりする、本書でも冒頭であるような出産などの重要なライフイベントに立ち会うことは仕事より何よりも大切なものとして扱われているのが欧米である。何もかもがむしゃらにやるべきだという非エッセンシャル思考はそろそろ絶滅してもらわないといけない状況になっているのではないか。
 
本書ではいくつもの引用があるが、睡眠についてのこの事実についても面白い。
 
 ハーバード・ビジネス・レビュー誌は「睡眠不足は企業リスクである」という記事を出し、睡眠不足がパフォーマンス低下をもたらす事実を紹介している。記事を書いたのはハーバード・メディカルスクール教授のチャールズ・A・ツァイスラー。彼は睡眠不足を酒の飲み過ぎになぞらえ、1日の徹夜や1週間の4〜5時間睡眠によって「血中アルコール濃度0.1%分に相当する機能低下」が起こると説明する。
「酔っぱらいを見て『いつも酔っているなんてさすが働き者だ!』と言う人はいないだろう。それなのに、睡眠を削っている人はなぜか働き者だと評価される」
ーp126
 

ちなみに血中アルコール濃度0.1%は、それほどでもないが、飲み会の翌日、酒が残ったまま仕事をするとあまりはかどらないのは明確なので、睡眠もそれに相当する影響があるんだろう。日本では0.3%が酒気帯び運転罰則の適用がされるようだ。http://www.atol-com.co.jp/mp/di/pdf/04_07/mametisiki/42.pdf

 

モチベーション

 
自分自身のモチベーションを保つのも大変だし、人のモチベーションを管理するのはもっと大変だ。確かに進歩が感じられなければ、モチベーションは保てない。だが、小さな進歩であっても評価・可視化することによってモチベーションが保てるならそれに越したことはない。
 
ただ一方で、意味の分からない目標値を設定するのは逆にモチベーション低下する可能性もあるので、このバランスも難しいところ。この場合、「何が重要な」小さな進歩なのか、ということを深く考える必要があるかもしれない。そういうところまで気を配れるかがマネジメントの意味なのだろうか。
 
「職場において感情・モチベーション・認知を高める諸要素のなかで、もっとも重要なのは、進歩しているという手応えである」と彼らは言う。
最初から高望みをして途中で挫折したら、何も残らない。少しずつでもいいから結果を出し、地道な成功を積み重ねたほうがずっと生産的だ。成功は次の成功を生み、やがてそれらは飛躍的な達成へとつながっていく。
 
<中略>
 
スタンフォード大学の元教授であり著名な教育者であったヘンリー・B・アイリングは、次のように述べている。
「人や組織の成長を長年見守ってきましたが、大きな進歩を望むなら、日々何度も繰り返す小さな行動にこそ着目すべきです。小さな改善を地道に繰り返すことが、大きな変化につながるのです」

何にも考えずとも情報がたくさん流れてきて、いつでも(休みであろうと、昼寝中であろうと)、どこにいても、コミュニケーションができてしまう環境の中で、選択をせずに何もかもするのはだれでもできることになている。エッセンシャル思考(Essentialism)は20世紀までの大量消費に対するアンチテーゼっぽいところもあり、これが今の時代の流れだなとここ2,3ヶ月本を読んでいて感じているところです。目指すことを明確にして、ボトルネックを特定し、邪悪なものを取り除く(pp.237-240)という型を早く身につけて新人類になりたいと思っています。

「Weniger, aber besser=より少なく、しかしより良く」を意識して。